「負担軽減」と逆行する事態が進行しているのに、野田佳彦首相は口を開けば負担軽減と言う。言葉を裏切っていると言わざるを得ない。
野田首相は今月24日の施政方針演説でも「日米合意を踏まえ、沖縄の声に真摯(しんし)に耳を傾け、誠実に説明し理解を求めながら、沖縄の負担軽減を図る」と述べた。
これは矛盾した言い方だ。国政選挙から名護市議選に至るまで、あらゆるレベルの選挙で示された沖縄の民意は辺野古移設に反対であり、県外移設を求めている。沖縄の大多数が反対する中で、辺野古移設が沖縄の負担軽減につながると主張するのは独りよがりで、説得力を欠く。
「負担軽減を図る」というのであれば、沖縄の現状にじかに触れ、首長や住民から直接話を聴くべきだ。野田首相は就任以来、まだ沖縄を訪れたことがない。官僚の説明をうのみにしては沖縄の基地問題は分からない。
辺野古移設に関しては米本国でも上院の有力議員、かつて沖縄問題を手がけた元政府高官、日米関係に造詣の深い研究者らから疑問の声が高まっている。国内では与党的立場で結成したばかりの「新党大地・真民主」も県外移設を掲げている。
日米とも潮目が変わる局面にあるというのに、野田首相は相変わらずである。辺野古移設がなぜ負担軽減といえるのか、なぜ辺野古でなければならないのか、の具体的な説明もまったくない。負担軽減という言葉だけがむなしく空回りしているのである。
野田首相は衆院本会議の代表質問で「評価書にはMV22オスプレイについて適切に反映されており、関係法令に基づき適切に対応している」と答弁した。
防衛省は、米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の最後の段階の評価書になって初めて垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを記載した。
どのような機種が配備されるかがアセスでは最も重要な要素であるにもかかわらず、手続きの最終段階でしか出さないのはアセスの精神に反する。究極の「後出し」だ。
評価書を審議している県環境影響評価審査会が第2回会合で公募した市民10人から意見を聴いたのは異例だ。
審査会も評価書で大幅な内容変更があったのを看過できないと判断したからに違いない。市民らがアセスのやり直しを要求したのは当然だ。
オスプレイ配備に伴うアセスで沖縄差別といえる米国の二重基準が明るみに出ても、日本政府は米国に異を唱えることをしない。ハワイでは米環境保護庁が学校区に配慮して月曜から金曜の午前8時から午後3時まで航空機の騒音を平均45デシベル(静かな事務所)と定めた基準を評価書に反映するよう求めている。
普天間飛行場には今秋にも配備されることになっているが、アセスの動きさえない。日本政府は米側に言われた通り右から左に流すだけだ。
こんなずさんなアセスで、民意を無視して辺野古移設を進めるのなら日本は独立国家の看板を返上した方がいい。